亀鳴くや株価の瞬いて下がる
敬体を崩さぬ二人花ずはう
水底の時間となりぬ夕蛙
抽斗の鍵穴に傷桜貝
風光るブラスバンドのリハーサル
対岸の桜よ別の中学校
大げさに手を振られたる花見かな
剪定の庭の広くて淋しくて
「引き分け」と腕を広げて立つ桜
花屑の濡れヘンゼルとグレーテル
ばらばらに家族見てゐる夜の桜
ネックレスのごとき街灯花の雨
運命の真つ逆さまに紅椿
夜桜や瞼ほんのり重くなる
春暑し壁につつぱり棒の跡
頭頂のツボ探らるる日永かな
人ばかりゐて桜は一人ぼつち
花見かな片側通行待つ間
花の雲ことばの少し足りぬ人
古書店の曇り硝子や花三分